一昔前までは理想とされた「ワークライフバランス」。しかし今、その考え方は古いと言われることもあります。本記事では、ワークライフバランスが古いと言われる理由や新しい働き方の概念、これからの時代に合った制度づくりのポイントを紹介します。
そもそもワークライフバランスとは？
まずは「ワークライフバランス」の定義や背景について確認しておきましょう。以下のポイントに沿って基本を解説します。
- ワークライフバランスの意味・使い方
- ワークライフバランスの歴史
ワークライフバランスの意味・使い方
ワークライフバランスとは、「仕事（ワーク）」と「生活（ライフ）」の両方を充実させるための考え方。仕事に追われてプライベートが犠牲になってしまわないよう、両者をバランスよく保つ状態を目指した取り組みです。
「残業を減らす」「有給休暇を取得しやすくする」「リモート勤務を導入する」といった活動も、ワークライフバランスの取り組みの一環として行われてきました。
ワークライフバランスの歴史
日本でワークライフバランスが注目されるようになったのは、少子高齢化や労働力不足が深刻化し始めた2000年代後半です。従来の「長時間労働」や「会社中心の生活」が見直されるようになり、働く人がライフステージに応じた生活を送りながらキャリアを築ける環境づくりが求められるようになりました。
政府も2007年に「ワーク・ライフ・バランス憲章」を発表し、多様な働き方を実現するための企業支援を進めるように。以降、育児や介護との両立支援、女性の活躍推進、テレワークの導入などが広く取り組まれてきました。
ただ、最近ではこうした取り組みの中で、「仕事と生活を切り分けることの限界」や、「多様な価値観に合っていないのでは？」といった声も徐々に聞かれるようになり、別の視点から働き方を考える動きが出始めています。
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ワークライフバランスが古いとされるようになった理由
ここからは、ワークライフバランスが古いとされるようになった理由を紹介します。
- 働き方が大きく変わったから
- ワークライフバランスだけでは通用しないから
働き方が大きく変わったから
ワークライフバランスが古いとされるようになったもっとも大きな理由は、働き方のスタイルが変わってきたことです。テレワークの普及やフレックスタイム制度の浸透によって、働く場所や時間に縛られない働き方が一般的になりつつあります。
このような状況から、「仕事と生活を完全に切り分けるワークライフバランスの考え方は、現実に即していないのでは？」と感じる人が増えているのです。
ワークライフバランスだけでは通用しないから
もうひとつの理由は、「バランス」という言葉が前提としている“対立構造”が現代にはそぐわなくなってきたという点です。仕事と生活を対比させ、それぞれの重みを調整するような働き方は、すべての人に当てはまるものではありません。
たとえば、仕事を通じて自己実現を図りたいと考えている人にとっては、仕事と生活を切り分けようとすること自体がストレスの原因になることもあります。
このように、画一的なバランスのとり方では多様化する価値観に対応しきれなくなっていることも、「ワークライフバランス」という枠組みが見直されている一因といえるでしょう。
ワークライフバランスに代わる考え方
「仕事と生活をバランスよく分ける」という従来の考え方に限界が見えはじめた今、より柔軟で現実的な考え方が注目されています。その中でも代表的なのが 「ワークライフインテグレーション」 や 「ワークインライフ」 という考え方です。
それぞれの特徴と概要を見ていきましょう。
- ワークライフインテグレーション
- ワークインライフ
ワークライフインテグレーション
ワークライフインテグレーションは、仕事と生活を分けるのではなく、両者をその人の人生の一部として捉えるという考え方です。「インテグレーション（統合）」という言葉の通り、仕事と生活が交わりながら互いに相乗効果を生み出す状態を目指します。
生活中に仕事の要素を無理なく取り入れることで、相互にストレスを軽減し、全体の満足度を高めることを目指しています。
ワークインライフ
ワークインライフは、仕事を人生全体の一部として捉えつつ、プライベートや自己成長、家庭とのバランスを重視する考え方です。
これまでの「ワークライフバランス」は、仕事と生活を同列に置き、両者を調整することを前提としていました。一方、ワークインライフでは仕事を生活の“中にあるもの”として位置づけるため、優先順位を柔軟に調整しやすくなります。
この考え方は、Z世代やミレニアル世代を中心に広がりつつあるのが特徴。「働くために生きる」のではなく、「意味のある働き方」を重視する考え方です。
新しい働き方の推進を成功させるコツ
ワークライフインテグレーションやワークインライフといった新しい働き方を実現するには、具体的な仕組みや制度の整備も必要です。企業側の取り組み次第で、従業員の働きやすさや定着率が大きく変わります。
ここからは、新しい働き方の推進を成功させるコツをまとめました。
- DX化を進める
- 多様性を考慮した制度を進める
- 定期的に制度を見直す
- 福利厚生サービスを活用する
DX化を進める
業務効率の改善には、デジタルツールの活用が欠かせません。紙や対面に頼った従来のやり方では、柔軟な働き方を支えるのは難しくなっています。
勤怠管理や経費精算、会議や資料共有など、社内の業務をオンライン化・クラウド化することで、時間や場所に縛られない働き方を実現できます。導入する際は、社員にとって使いやすいツールを選び、運用ルールを明確にすることも大切です。
多様性を考慮した制度を進める
働く人の事情や価値観は年々多様化しています。育児や介護、病気との両立、副業・地域活動への参加など、それぞれ異なるライフスタイルがあります。
こうした背景を踏まえ、時短勤務・フレックスタイム・副業容認など、選択肢を広げる制度を整備することも重要です。
定期的に制度を見直す
働き方の制度は一度つくって終わりではありません。実際に運用してみると、現場での使いづらさや想定外の課題が見えてくることも多くあります。
定期的なアンケートやヒアリングを通じて従業員の声を拾い、制度の見直しにつなげましょう。また、時代やテクノロジーの変化に合わせて都度見直すことで、より実情に即した働き方を実現しやすくなります。制度が形骸化しないよう、「使われること」を前提とした見直しのサイクルを心がけましょう。
福利厚生サービスを活用する
従業員の暮らしを支える福利厚生の充実も、新しい働き方には欠かせません。
たとえば、リフレッシュ休暇や自己啓発支援、カフェテリアプラン、社外施設の利用など、心身の健康やモチベーションを保つ仕組みを整えることで、長く働きやすい環境を整えられます。
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ワークライフバランスに関するよくある質問
最後に、ワークライフバランスに関するよくある質問をまとめました。
- Q. ワークライフバランスが整う・保たれるとは？
- Q. 今の時代のワークライフバランスは無意味？
Q. ワークライフバランスが整う・保たれるとは？
ワークライフバランスが「整う」や「保たれる」とは、仕事と生活の両方が過度なストレスなく成り立っている状態を指します。たとえば、定時退社できる日が多く、家族との時間や趣味の時間も確保できている場合は、ワークライフバランスが整っているといえるでしょう。
Q. 今の時代のワークライフバランスは無意味？
現代でワークライフバランスが「無意味」と感じる人がいる背景には、バランスという考え方そのものに限界があることが挙げられます。フレキシブルな働き方が進む中、「明確に線引きをすること自体が実情にそぐわない」と考える人が増えています。
ただし、ワークライフバランスの意義がなくなったわけではありません。むしろ、ワークライフバランスの考え方を土台にした上で、より柔軟な概念に進化していると捉えるとわかりやすいでしょう。
ワークライフバランスが古いとされる理由は？新しい考え方も解説
本記事では、ワークライフバランスが古いとされる理由や、ワークライフインテグレーションなどの新しい働き方について解説しました。自社の制度や働き方を見直す際の参考に、ぜひお役立てください。